不倫で離婚するときの慰謝料と養育費の違い|法定養育費と財産分与
この記事の結論
- 慰謝料・養育費・財産分与は、根拠も相手も期限も別のお金です。慰謝料は不貞による精神的苦痛の賠償、養育費は子どもの生活費、財産分与は夫婦で築いた財産の清算です。
- 2026年4月1日施行の改正民法で「法定養育費」ができ、養育費を決めずに協議離婚した場合でも、子を主に育てる親は子1人につき月2万円を請求できるようになりました。ただしこれは取決めまでのつなぎで、金額は算定表などで別に決めるのが基本です。
- 財産分与を家庭裁判所に求められる期限は、改正後の民法で離婚の時から5年です。不倫の慰謝料は、損害と相手を知った時から3年で時効にかかります。
最終更新日: 2026-10-23
配偶者の不倫で離婚を考えるとき、「慰謝料をもらえば養育費は少なくてよいのか」「慰謝料と財産分与はまとめて決めるのか」と混乱しやすいものです。ここでは3つのお金を分けて、条文と法務省・裁判所の資料にもとづいて整理しました(2026年10月23日確認)。
3つのお金の違い
| 慰謝料 | 養育費 | 財産分与 | |
|---|---|---|---|
| 何のお金か | 不貞行為で受けた精神的苦痛の賠償 | 子どもの監護(生活・教育)にかかる費用の分担 | 婚姻中に夫婦で取得・維持した財産の清算など |
| 根拠 | 民法709条・710条 | 民法766条(取決めが無い場合は766条の3) | 民法768条 |
| 請求する相手 | 不倫をした配偶者、不倫相手 | 子と離れて暮らす親 | 元配偶者 |
| 期限 | 損害と加害者を知った時から3年、不貞の時から20年(724条) | 子の監護が続く間。過去分は取決めの内容による | 家庭裁判所への請求は離婚の時から5年(768条2項) |
| 不倫との関係 | 不倫が直接の理由 | 不倫の有無で額は変わらないのが原則 | 不倫の有無で分け方は変わらないのが原則 |
条文はe-Gov法令検索「民法」で確認できます。養育費は子どものためのお金なので、慰謝料を多く払うから養育費を減らす、という取引は子の利益に反します。慰謝料の額の決まり方は不倫慰謝料の金額を左右する事情、時効は不倫慰謝料の時効一覧にまとめています。
2026年4月から始まった法定養育費
改正民法766条の3は、父母が養育費を決めずに協議離婚した場合、離婚の時から引き続き子を主に監護している親が、もう一方の親に対して、離婚の日から毎月末に一定額を請求できると定めました。額は法務省令で定められ、子1人につき月2万円(子が2人なら月4万円、3人なら月6万円)です(法務省「養育費に関する法務省令の概要」)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 2026年4月1日(改正民法・省令とも) |
| 額 | 月2万円×子の数(離婚した月などは日割り) |
| 終わる時 | 父母が協議で養育費を決めた日、家庭裁判所の審判が確定した日、子が成年に達した日のいずれか早い日 |
| 支払いを拒める場合 | 支払う側が、支払能力が無いこと、または払うと生活が著しく窮迫することを証明したとき |
同じ改正で、養育費の取決めがある場合、子1人につき月8万円までは公正証書などが無くても財産を差し押さえられる「先取特権」も付きました。改正の全体は法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」にあります。
養育費の額の決め方
法定養育費は、取決めをするまでの最低限のつなぎです。実際の額は、父母の収入や子の人数・年齢をもとに話し合い、まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判で決めます。家庭裁判所では、司法研修所の研究で示された養育費・婚姻費用の算定表が目安として使われています(裁判所「平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」)。
話し合いで決めるときの順番
| 順番 | 決めること |
|---|---|
| 1 | 親権者と、子を主に監護する親 |
| 2 | 養育費の月額・支払日・終わる時期。公正証書にしておくと支払いが止まったときに手続きを進めやすい |
| 3 | 財産分与の対象(預金・不動産・保険・退職金など)と分け方 |
| 4 | 慰謝料の額と支払方法。不倫相手にも請求するなら、二重に受け取ることにならないよう整理する |
離婚せずに慰謝料だけを求める場合は離婚しない場合の不倫慰謝料、話し合いがまとまらないときの手続きは交渉・調停・訴訟の違いと流れ、受け取った慰謝料や財産分与の税金は慰謝料を受け取ったときの税金を参考にしてください。離婚と異性関係の統計は不貞・離婚の慰謝料と司法統計にあります。
よくある質問
慰謝料をたくさん払う代わりに養育費をなしにできますか?
養育費は子どもの生活のためのお金で、慰謝料とは目的も根拠も違います。親どうしの取引で養育費をなしにすることは子の利益に反し、後から子を育てる親が請求できる場合もあります。
養育費を決めずに離婚してしまいました。
2026年4月1日施行の改正民法により、養育費を決めずに協議離婚した場合でも、子を主に育てている親は子1人につき月2万円の法定養育費を請求できます。あわせて、話し合いや家庭裁判所の調停で正式な額を決めてください。
財産分与はいつまで請求できますか?
家庭裁判所に財産分与を求められるのは、改正後の民法768条2項で離婚の時から5年までです。改正前は2年だったため、離婚した時期によって扱いが違う可能性があります。早めに確認してください。
本記事は一般的な情報提供で、個別の事情で請求できる額や手続きを判断するものではありません。