不貞(不倫)や離婚をめぐる慰謝料を考えるとき、「離婚は実際どのくらい起きているのか」「離婚の動機として異性関係はどの程度あるのか」「慰謝料の相場はいくらか」といった疑問が出てきます。本記事は、裁判所の司法統計と厚生労働省の人口動態統計という公的な一次統計をもとに、不貞・離婚に関する数字を中立にまとめたリファレンスです。慰謝料額については、法律で定まった固定相場が存在しないため、断定はせず「幅がある」「事案ごとに判断される」という前提で整理します。数値はすべて出典元の一次資料にリンクしています。
離婚件数の推移(人口動態統計)
離婚の全体像は、厚生労働省の人口動態統計(確定数)で確認できます。日本の年間離婚件数は、令和6年(2024年)で18万5904組、離婚率(人口千対)は1.55でした。前年(2023年)の18万3814組・1.52より、件数・率ともにわずかに上昇しています。
| 年 | 離婚件数 | 離婚率(人口千対) |
|---|---|---|
| 令和2年(2020) | 193,253組 | 1.57 |
| 令和3年(2021) | 184,384組 | 1.50 |
| 令和4年(2022) | 179,099組 | 1.47 |
| 令和5年(2023) | 183,814組 | 1.52 |
| 令和6年(2024) | 185,904組 | 1.55 |
2020年以降は減少傾向が続いたのち、2023年・2024年は小幅に増加へ転じました。件数は令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況、および令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況で確認できます。なお、日本の離婚の約9割は裁判所を介さない協議離婚であり、この件数には協議・調停・裁判のすべてが含まれます。
離婚の動機に関する司法統計とは
「離婚の動機として異性関係(不貞)がどの程度あるか」を示す公的データとしては、裁判所の司法統計年報(家事編)があります。ここに収録される「婚姻関係事件数―申立ての動機別」は、家庭裁判所に夫婦関係の調整(離婚など)を求めて申し立てた人が挙げた動機を集計したものです。
注意したいのは、この統計が対象とするのは家庭裁判所へ持ち込まれた事件であり、協議離婚は含まれないという点です。また、動機は「申立人が言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法」で重複集計されているため、割合の合計は100%になりません。あくまで「調停・審判を申し立てた人が、どんな動機を挙げているか」の傾向を示すデータとして読む必要があります。
申立ての動機別データ(2024年)
最新の令和6年(2024年)司法統計年報 家事編 第19表によると、婚姻関係事件の申立人は妻が4万3033人、夫が1万5396人でした(合計5万8429人)。妻からの申立てが全体の約7割を占めます。動機別の上位は次のとおりです。
妻が申し立てた動機(総数43,033人・上位)
| 順位 | 動機 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 性格が合わない | 16,503 |
| 2 | 生活費を渡さない | 12,461 |
| 3 | 精神的に虐待する | 11,288 |
| 4 | 暴力を振るう | 7,690 |
| 5 | 異性関係 | 5,743 |
夫が申し立てた動機(総数15,396人・上位)
| 順位 | 動機 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 性格が合わない | 9,233 |
| 2 | 精神的に虐待する | 3,358 |
| 3 | 異性関係 | 1,820 |
| 4 | 浪費する | 1,764 |
| 5 | 家族親族と折り合いが悪い | 1,699 |
(「その他」の区分は順位表から除いています。)出典は令和6年 司法統計年報 3 家事編(第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別)です。
「異性関係(不貞)」が占める位置
2024年のデータでは、異性関係を動機に挙げた申立人は妻が5,743人、夫が1,820人で、合計7,563人でした。妻の申立てでは動機の第5位、夫の申立てでは第3位(「その他」を除く)に位置しています。妻・夫のいずれでも、最も多い動機は「性格が合わない」であり、異性関係はそれに次ぐ上位の動機の一つとして継続的に現れています。
ここでの「異性関係」は、必ずしも法的な不貞行為(配偶者以外との性的関係)と一致するわけではなく、申立人が主観的に挙げた動機である点に留意が必要です。統計上の動機の多寡と、実際の慰謝料請求が認められるかどうかは別の問題であり、請求の成否は個別の事実と証拠によって判断されます。配偶者が離婚を選ばずに不倫相手へ請求する場合の考え方は離婚しない場合の不倫慰謝料の解説を参照してください。
統計を読むときの3つの注意点
- 協議離婚は含まれない:司法統計の動機データは家庭裁判所の事件のみが対象で、離婚全体の約9割を占める協議離婚は反映されていません。
- 重複集計である:動機は1人につき最大3個まで挙げる方式のため、割合の単純合計はできません。
- 動機は慰謝料額を意味しない:「異性関係」を動機に挙げた件数が多いことと、慰謝料が高額になることは直接結びつきません。金額は別の要素で判断されます。
不貞・離婚慰謝料の「相場」は一律ではない
不貞や離婚に伴う慰謝料について、法律で定められた固定額や公的な統一相場はありません。慰謝料は民法709条・710条の不法行為に基づく損害賠償であり、裁判・交渉では、婚姻期間、不貞の期間・回数・態様、婚姻関係が破綻していたか、離婚に至ったか否か、未成熟子の有無、当事者の対応などが総合的に考慮されます。条文はe-Gov法令検索の民法で確認できます。
インターネット上には金額の目安が数多く出回っていますが、そのまま自分のケースに当てはめるのは危険です。実際の裁判例は事案ごとに幅が大きく、同じ「不貞」でも認められる金額は事情によって大きく異なります。個別の裁判例の傾向は裁判所の裁判例検索で調べられますが、自分のケースに近い先例の読み方は専門家に確認することをおすすめします。相場の考え方については慰謝料相場の考え方の解説も参考になります。
慰謝料額を左右する主な要素
| 考慮される要素 | 具体例 |
|---|---|
| 婚姻関係への影響 | 不貞が原因で離婚・別居に至ったか、婚姻関係が継続しているか |
| 不貞の内容 | 期間、回数、態様、妊娠の有無など |
| 婚姻の状況 | 婚姻期間の長さ、未成熟子の有無 |
| 破綻の先後 | 不貞の時点で婚姻関係が既に破綻していたか |
| 当事者の対応 | 謝罪や関係解消の有無、反省の程度 |
| 証拠の有無 | 不貞の事実を裏づける客観的資料があるか |
これらは一例であり、金額は複数の要素の組み合わせで決まります。誰が何を立証すべきかについては立証責任に関する解説を、証拠の集め方についてはLINEなどの記録が証拠になるかの解説を参照してください。なお、肉体関係の有無が争いになるケースや、配偶者の不倫相手も既婚者だった「ダブル不倫」のケースなど、事情によって慰謝料の考え方が複雑になる類型については、肉体関係なしでも慰謝料請求できるかの解説とダブル不倫の慰謝料請求と求償権の注意点で個別に整理しています。
消滅時効にも注意する
不法行為に基づく慰謝料請求権には消滅時効があります。民法724条は、原則として「損害および加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」と定めています。不貞の慰謝料では「不貞の事実と相手を知った時」からの起算が問題になり、いつから進行するかは事案によって判断が分かれます。詳しくは時効の起算点に関する解説もあわせてご確認ください。期限が近い可能性がある場合は、早めに弁護士へ相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 離婚の原因で「異性関係(不倫)」はどのくらいの割合ですか。
A. 令和6年(2024年)の司法統計では、家庭裁判所に申し立てた妻の5,743人、夫の1,820人が異性関係を動機に挙げています。ただしこれは動機の重複集計であり、割合として単純比較はできません。また協議離婚は含まれない点にも注意が必要です。
Q2. 不貞の慰謝料はいくらが相場ですか。
A. 法律で定められた固定相場はありません。婚姻期間や不貞の態様、離婚に至ったかどうかなど多くの要素で幅が生じます。金額を断定する情報には注意し、個別事情に即した見通しは弁護士に確認してください。
Q3. 統計上「異性関係」が多い年は慰謝料も高くなりますか。
A. いいえ。統計上の動機の件数と、個別事件で認められる慰謝料額は連動しません。金額は各事案の事実と証拠に基づいて判断されます。
Q4. これらの統計はどこで確認できますか。
A. 離婚件数は厚生労働省の人口動態統計、動機別データは裁判所の司法統計年報(家事編)で公開されています。いずれも本記事末尾の「参考にした公的情報」からアクセスできます。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」(2024年・2023年の離婚件数・離婚率)
- 厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」(2022年・2021年の離婚件数・離婚率)
- 裁判所「令和6年 司法統計年報 3 家事編」(第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別)
- 裁判所「司法統計年報」トップページ
- 裁判所「裁判例検索」
- e-Gov法令検索「民法」(709条・710条・724条)
免責事項
本記事は、公的統計と一般的な法制度の考え方を紹介する情報提供であり、個別案件の法的助言、慰謝料額、請求の成否を保証するものではありません。統計の数値は出典公表時点のものであり、最新の公表値は各一次資料でご確認ください。慰謝料の金額や請求の可否は事案ごとに大きく異なるため、具体的な判断は弁護士へご相談ください。
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