配偶者の不倫が発覚したものの離婚はせず、再発防止の約束として誓約書(念書)を書かせたい――婚姻を継続する選択をした場合によく取られる方法です。誓約書は書き方によって意味合いが大きく変わり、いざというときに役立つものにするには、盛り込む内容と法的な限界を理解しておく必要があります。本記事では、誓約書の記載事項と効力の考え方を解説します。
誓約書に盛り込みたい主な項目
- 不貞行為の事実を認める記載(相手方、期間の概要)
- 不倫相手との接触禁止(連絡・面会をしないこと)
- 再び不貞行為をしないことの誓約
- 違反した場合の取り決め(違約金、離婚への同意、慰謝料の支払いなど)
- 作成日、署名(可能であれば自書)・押印
特に「不貞の事実を認める記載」は重要です。後日、離婚や慰謝料の争いになった際に、不貞行為の存在を示す証拠の一つとして機能し得るためです。
誓約書の法的効力と限界
1. 証拠としての効力
本人が署名した誓約書は、不貞の事実や合意内容を示す書証になります。ただし「無理やり書かされた」と後から争われることもあるため、脅迫的な状況で書かせるのは避け、冷静な話し合いの中で作成することが望ましいとされています。
2. 夫婦間の契約に関する民法上の論点
民法には、夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消せるとする規定(754条)があります。もっとも、判例上、婚姻関係が実質的に破綻した後の取消しは認められないと解釈されており、誓約書が常に無意味になるわけではありません。条文はe-Gov法令検索の民法で確認できます。
3. 違約金条項の限界
「違反したら1億円支払う」のような実態とかけ離れた高額の違約金は、民法90条の公序良俗違反として全部または一部が無効と判断されるおそれがあります。金額は、慰謝料の一般的な水準を踏まえた現実的な範囲で定めることが、かえって実効性につながります。
作成時の実務ポイント
| ポイント | 理由 |
|---|---|
| 本人の自書で署名させる | 本人の意思で作成したことを示しやすい |
| 具体的な行為を特定して書く | 「何をしたら違反か」が明確になり、争いを防ぐ |
| 穏当な状況で作成する | 強迫による取消しの主張を防ぐ |
| 原本を請求者側が保管する | 紛失・破棄を防ぐ |
金銭の支払い約束(慰謝料の分割払いなど)を含める場合は、公正証書にしておくと、不払い時に強制執行を検討できる場合があります。書面全体の構成は、相手方と取り交わす示談書とも共通する部分が多いため、示談書に盛り込むべき必須項目の解説もあわせて参考にしてください。
不倫相手側との合意との関係
配偶者に書かせる誓約書と、不倫相手との示談書は別のものです。関係を確実に終わらせるには、不倫相手側とも接触禁止を含む合意を取り交わすことが有効な場合があります。婚姻を続けながら不倫相手へ請求する際の考え方は、離婚しない場合の慰謝料請求の進め方で解説しています。なお、不倫相手も既婚者だった場合は求償権の扱いが論点になります。詳しくはダブル不倫の慰謝料請求の注意点をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 誓約書はパソコンで作成してもよいですか。
A. 本文はパソコン作成でも構いませんが、署名は本人の自書にし、日付と押印を添えることをおすすめします。
Q2. 誓約書があれば違反時に必ず違約金を取れますか。
A. 金額の相当性や作成時の状況によっては、全部または一部が認められないこともあります。現実的な金額設定と、穏当な作成過程が重要です。
Q3. 誓約書を書くことを拒否されました。強制できますか。
A. 作成を強制することはできません。拒否された場合は、弁護士を交えた話し合いや、不倫相手側との示談を先行させるなど、別の進め方を検討してください。
Q4. 誓約書は離婚の際にも使えますか。
A. 不貞の事実を認めた書面として、離婚協議や調停・訴訟で証拠になり得ます。原本は大切に保管してください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断は弁護士等の専門家にご相談ください。誓約書の効力や違約金の回収を保証するものではありません。相談先に迷う場合は、法テラス(日本司法支援センター)や各地の弁護士会の法律相談窓口をご利用ください。