不同意性交等罪とは|2023年改正の要点と民事の慰謝料請求・相談先

最終更新日: 2026-09-06

この記事の結論

  • 2023年7月13日施行の改正刑法で新設された不同意性交等罪(刑法177条)について、条文が挙げる8つの事由、性交同意年齢や公訴時効の変更点を整理します。
  • 刑事手続とは別に進む民事の慰謝料請求の考え方、時効、相談前に整理したいこと、警察・ワンストップ支援センターなどの相談先もまとめました。
  • 本記事では、不同意性交等罪とは/「困難な状態」として条文に挙げられた8つの事由/2023年改正で変わったその他の点 を扱っています。

「不同意性交等罪」という言葉を、報道やSNSで目にする機会が増えました。2023年の刑法改正で新しく設けられた罪名で、それまでの強制性交等罪・準強制性交等罪が組み替えられたものです。このページでは、条文が何を定めているかを整理したうえで、刑事の手続とは別に進む民事の慰謝料請求、そして相談先をまとめます。被害に遭われた方は、まずご自身の安全と体調を最優先にしてください。

緊急のときは110番へ。
相談先は、警察相談専用電話 #9110、性犯罪被害相談電話 #8103(ハートさん)、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891(はやくワンストップ)が全国共通です。証拠の採取や医療的なケアは時間が経つほど難しくなるため、迷っている段階でも早めに連絡してください。

不同意性交等罪とは

2023年(令和5年)7月13日に施行された改正刑法で、従来の強制性交等罪(旧177条)と準強制性交等罪(旧178条2項)が統合され、不同意性交等罪(刑法177条)になりました。わいせつ行為についても、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪が不同意わいせつ罪(刑法176条)に整理されています。

条文が処罰の対象とするのは、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態にあることに乗じて」性交等をした場合です。改正前は「暴行または脅迫」が要件の中心にあり、抵抗しなかった、逃げなかったという事情が被害者側の不利に働く場面がありました。改正法は、抵抗の有無ではなく同意しない意思を示すことが困難だったかどうかを判断の軸に据えています。

法定刑は、不同意性交等罪が5年以上の有期拘禁刑、不同意わいせつ罪が6か月以上10年以下の拘禁刑です(拘禁刑は2025年6月1日から。それ以前の行為については懲役として扱われます)。条文そのものはe-Gov法令検索の刑法で確認できます。

「困難な状態」として条文に挙げられた8つの事由

どのような場合に「同意しない意思を示すことが困難」といえるのかについて、条文は次の8つを列挙しています。これらは代表例を示したもので、当てはまるかどうかは事案ごとの判断になります。

  • 暴行または脅迫を用いること、あるいはそれらを受けたこと
  • 心身の障害があること、またはそれを生じさせること
  • アルコールや薬物を摂取させること、または摂取した影響があること
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にあること、またはその状態にさせること
  • 同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと(不意打ちなど)
  • 予想と異なる事態に直面して恐怖や驚がくの状態にあること、またはその状態にさせること
  • 虐待に起因する心理的反応があること、またはそれを生じさせること
  • 経済的または社会的な関係上の地位に基づく影響力によって、行為に応じなければ不利益が生じることを憂慮していること、またはそう憂慮させること

最後の類型は、職場の上下関係、指導する立場と受ける立場、支援や生活を握られている関係などが想定されています。断れば仕事や立場を失うと考えざるを得なかった、という状況が評価の対象になり得るということです。

2023年改正で変わったその他の点

性交同意年齢が13歳から16歳へ

相手の同意があったとしても犯罪が成立する年齢の基準が、13歳未満から16歳未満に引き上げられました。ただし13歳以上16歳未満の相手については、行為をした人が5歳以上年長である場合が対象です。

公訴時効の延長

不同意性交等罪の公訴時効は10年から15年に、不同意わいせつ罪は7年から12年に延長されました。さらに、被害を受けた時点で18歳未満だった場合は、18歳になるまでの期間が上乗せされます。時間が経ってしまったから無理だと自分で判断せず、まず相談先に事情を伝えてください。

撮影行為の処罰規定が新設された

同じ2023年7月13日に、性的姿態等撮影等処罰法(撮影罪)が施行されました。同意なく性的な姿態を撮影する行為、その画像を提供・保管・送信する行為が処罰の対象となり、撮影された記録の消去を命じる仕組みも設けられています。

刑事の手続と、民事の慰謝料請求は別に進む

刑事事件は、警察・検察が捜査し、起訴されれば裁判所が刑罰を科すかどうかを判断する手続です。これに対して慰謝料の請求は、被害を受けた本人が加害者に対して行う民事の手続で、民法709条の不法行為に基づきます。両者は目的も判断の基準も違うため、次のような関係になります。

  • 刑事で不起訴になった場合でも、民事で慰謝料が認められる可能性はある
  • 刑事事件の中で示談が成立した場合、その内容が民事の請求範囲に影響することがある
  • 刑事の記録(供述調書、実況見分調書など)は、手続を踏めば民事の資料として使える場合がある

示談の場面では、金額だけでなく、清算条項(この件で今後は請求しないという合意)や口外禁止条項の書き方が後々効いてきます。署名の前に条項を確認する視点は、示談書にサインする前に確認すべき条項にまとめています。

慰謝料請求の時効

人の生命または身体を害する不法行為の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から5年、行為の時から20年で時効にかかります(民法724条、724条の2)。通常の不法行為の3年より長く定められていますが、期間の起算点は事案によって争いになることがあります。時効が心配な場合の考え方は時効のページもあわせてご覧ください。

報道されている事例から見える争点

実際の事件では、行為があったかどうかより「同意しない意思を示すことが困難な状態だったか」「加害者側がその状態を認識していたか」が争われます。以下は公開されている報道に基づく整理です。刑事裁判が確定するまでは無罪が推定されます。係属中の事件について、有罪であると断定するものではありません。

職場・仕事上の関係が背景にあるとされる事件(公判中)

お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバー・斉藤慎二被告は、2024年7月30日に東京都新宿区で駐車中のロケバス車内で、番組で共演予定だった20代女性に性的行為をしたとして、不同意性交と不同意わいせつの罪で在宅起訴されました。検察側は2026年8月5日の公判で懲役7年を求刑しています。

弁護側は無罪を主張しており、被告本人は「同意があったと思っていた」と述べ、弁護側は女性の仕事に影響力を持つ立場にはなく、同意しない意思の表明が困難だとは認識していなかったと主張しています。東京地裁(伊藤ゆう子裁判長)の判決は2026年11月16日に指定されています(時事ドットコム 2026年8月5日)。

この事件で問題になっているのは、条文が挙げる8つの事由のうち「経済的または社会的な関係上の地位に基づく影響力」と「同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと」の当てはめ、そして加害者とされる側がその状態を認識していたかどうかです。「同意があると思った」という言い分が通るかどうかは、当時のやり取り、両者の立場、行為の前後の言動から判断されます。

刑事事件にならなくても民事で争われる場合がある

テレビ出演者をめぐる事案では、刑事告訴に至らないまま、当事者間の示談交渉や、放送局が設置した第三者委員会の調査で扱われた例が報じられています。刑事手続がなくても、民法709条に基づく慰謝料請求は別に成り立ち得ます。逆に、示談の際に結んだ清算条項や守秘義務条項が、後の請求や発信を制限することもあります。

時間が経ってから相談に至る例が多い

職場や取引先など、関係が続く相手からの被害では、その場で拒めず、相談までに年単位の時間が空くことがあります。改正法が公訴時効を15年に延ばし、被害当時18歳未満なら18歳になるまでを加算するようにしたのは、こうした実情を踏まえたものです。

不倫・不貞の問題と重なるとき

当事者のいずれかに配偶者がいる場合、同じ出来事が複数の法律問題として現れます。ここで決定的に違うのは同意があったかどうかです。

  • 同意のない性的行為だった場合:加害者に対する刑事の問題であり、被害を受けた本人が慰謝料を請求する側になります。
  • 同意のうえでの交際・関係だった場合:配偶者から不貞行為として慰謝料を請求される問題になります。この場合の対応順は慰謝料を請求されたときのページにまとめています。
  • 既婚であることを隠されていた場合:貞操権侵害として、こちらから請求を検討できる場面があります。貞操権侵害についてをご覧ください。

加害者側が「関係は合意のうえだった」と主張し、被害を受けた側が同意はなかったと述べるとき、当時のやり取りや前後の状況が判断材料になります。当事者だけで結論を出そうとせず、早い段階で専門家に事情を伝えてください。

相談前に整理しておきたいこと

無理のない範囲で構いません。思い出すことがつらい場合は、書けるところだけで十分です。

  • 安全の確保:相手との連絡手段を断てるか、住居や職場で顔を合わせる状況かを確認する
  • 医療機関の受診:外傷の有無にかかわらず、産婦人科などの受診記録は資料になり得ます
  • 時系列:出来事の日時、場所、その前後にどこで誰といたか
  • 記録:メッセージ、通話履歴、位置情報、交通系ICの履歴、当日の服装や持ち物
  • 相談した相手:友人、家族、職場など、誰にいつ話したか
ご注意: 相手の端末を無断で開く、盗聴・盗撮をするといった方法での証拠集めは、それ自体が違法となるおそれがあります。集め方に迷ったら、実行する前に相談してください。

お住まいの地域、または被害を受けた場所の窓口から確認できます。ワンストップ支援センターの名称・電話・受付時間、警察と弁護士会、管轄の地方裁判所をまとめています。

相談先

  • 警察:緊急時は110番。緊急でない相談は #9110、性犯罪被害相談電話は #8103
  • ワンストップ支援センター:#8891。医療、法律、心理の支援窓口につないでもらえます
  • 法テラス:収入等の条件を満たす場合、無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できます
  • 弁護士:刑事の告訴・被害者参加と、民事の慰謝料請求のどちらも視野に入れて方針を立てられます

よくある質問

抵抗しなかったのですが、それでも罪になりますか。

改正法は抵抗の有無を要件にしていません。同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難だったかどうかで判断されます。恐怖で動けなかった、断れば不利益を受けると考えたといった事情も、条文が挙げる事由に関わります。

何年も前の出来事ですが、間に合いますか。

不同意性交等罪の公訴時効は15年で、被害当時18歳未満だった場合は18歳になるまでの期間が加算されます。民事の慰謝料請求は損害と加害者を知った時から5年です。ご自身で判断せず、期間の数え方を含めて相談先に確認してください。

刑事事件にはしたくないのですが、慰謝料だけ請求できますか。

民事の請求は刑事の告訴とは別の手続なので、告訴せずに慰謝料を請求することは可能です。ただし、加害者の対応や証拠の集まり方は事案によって異なるため、方針は事情を伝えたうえで検討してください。

相手が「合意のうえだった」と言っています。

当時のやり取りの記録、行為の前後の言動、体調や状況などから総合的に判断されます。相手と直接やり取りして認めさせようとすると、かえって不利な記録が残ることがあります。連絡を取る前に相談してください。

会社の上司からで、断ると仕事に影響が出る状況でした。

経済的・社会的な関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮していた場合は、条文が挙げる8つの事由の一つに当たり得ます。人事上の記録や勤務実績、当時のやり取りが資料になります。


本記事は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な法律情報であり、個別の法的助言ではありません。成立の可否や金額を保証・確定するものではありません。

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